全シールド到達 掘進工程が完了

大井地区に到達した大林組のシールド機
 2013年度の開通をめざして建設が着々と進む首都高速道路の中央環状品川線。その品川線本線となる全長約8㌔のシールドトンネルが、3月22日に大井行、大橋行ともに掘進を完了した。10年3月に開通した中央環状線新宿線の山手トンネルとつながれば、念願の中央環状線が晴れて完成し、日本最長の道路トンネルとなる。品川線本線は、大橋ジャンクション(JCT)近くの「大坂橋連壁」に面盤を付けて掘進を終えた。これから「大橋地区本線接続工事」によって、新宿線と品川線が接続される。すべてのシールド掘進が完了し、工事はひとつの山場を超えた。今後は、大橋JCTなどへの接続工事、五反田出入口などの工事を進める。品川線では、大断面長距離シールド、地上発進・到達シールド、トンネル同士の非開削地中連結など、土木の最先端技術が惜しみなく投入されている。本特集では、発注者、施工者のインタビューを含め、余すことなく品川線の技術を紹介する。

13年度末の工事完成へ

 首都高速道路株式会社代表取締役会長兼社長
 橋本 圭一郎

 平素より、弊社の事業に格別のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。2012年3月22日に、当社施工の中央環状品川線シールドマシンが終点である中央環状新宿線との接続部に到達しました。本件工事に関し、地元の方々をはじめとした関係者の皆様の長年にわたるご理解とご協力に心から感謝申し上げます。
 中央環状品川線は、首都圏3環状道路の1つである中央環状線の南側区間を構成する路線であり、東京都と当社が共同で事業を進めているところです。渋滞対策や災害時における代替路の確保の観点から首都圏3環状を早期に整備する必要があると思いますが、本路線が開通すると3環状のうち最初の環状道路が完成することになります。都心部を経由せずに高速湾岸線と高速3号渋谷線を相互に接続し、首都高全体のネットワークが効率よく機能することで都心環状線などの慢性的な渋滞緩和に寄与するほか、物流の拠点である羽田空港、東京港などとのアクセス向上が図られることになります。
 今回到達したシールドマシンは、09年1月に高速湾岸線付近の大井北立坑から高速3号渋谷線の大橋ジャンクションに向けて発進したもので、外径12m以上の大断面シールドとしては、世界でも類のない約8㌔におよぶ長距離掘進を終えたこととなります。東京都施工のシールドマシンについては、11年12月13日に到達しており、また、当社施工の大橋連結路シールドトンネルについても3月8日に掘進を終了していることから、今回の到達により中央環状品川線のシールドトンネルの掘進は全て完了しました。引き続き、トンネル内の道路床板や五反田出入口工事、大橋ジャンクションと中央環状品川線の接続工事など、13年度末の完成を目指して、工事を精力的に進めてまいります。
 今後とも首都高速道路を安全・円滑・快適にご利用いただけるよう様々なサービスの向上に努めてまいりますので、ご支援ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

リング完成へまた一歩前進


東京都技監
村尾 公一

 平素より、東京都の道路整備事業に、格別のご理解とご協力をいただき、厚く御礼申し上げます。  このたび、中央環状品川線において整備しておりました、東京都および首都高速道路株式会社のシールドトンネルが、世界でも類のない約8㌔に及ぶ長距離掘進を終え、終点である中央環状新宿線との接続部に到達いたしました。
 この到達により、中央環状線の2013年度のリング完成に、また一歩近づくことができました。この間、ご尽力いただいた多くの方々に深く敬意と感謝の意を表します。
 さて、中央環状品川線をはじめとする首都圏3環状道路は、首都圏に集中する放射状の高速道路を相互に連結し、交通の分散などを図ることにより、首都圏のみならず、広く国全体にその整備効果が及ぶ重要な幹線道路ネットワークを形成するものです。
 また、東日本大震災において改めて認識されたように、災害時における人や物資の輸送ルートの複数化や避難路など、都民・国民の生命・財産を守る「命の道」として、重要な役割を担う道路でもあります。
 首都・東京の渋滞の解消のみならず、切迫する首都直下地震や東海地震においても日本の東西交通の分断を防ぐなど、その整備効果は多岐に及ぶものであり、首都圏3環状道路の早期完成は喫緊の課題です。
 東京都では、首都圏3環状道路のほか、区部の環状方向の道路や多摩南北・東西方向の骨格幹線道路の整備を推進するとともに、開かずの踏み切りを解消する連続立体交差事業を進めています。東京の道路整備は、都市機能や利便性を向上させるだけでなく、日本全体の経済を活性化させ、国際競争力を高めるなど、その効果は全国に及びます。
 今後とも、都民・国民の快適性をより一層向上させるために、首都圏3環状道路をはじめとする東京の道路整備に全力で取り組んでまいります。

2つの複雑なジャンクション


品川線の全線図
シールド掘進の総合拠点
 首都高速湾岸線の大井ジャンクションから分岐した品川線は、高架構造を経由して京浜運河を斜交して地下へと潜っていく。JCT付近の高架構造では重さ300tもの桁を一括架設し、高架から地下へは地上発進・到達シールドで大井北立坑まで掘進した。大井北立坑から大橋付近までは、直径12mを超える2本のシールド機で8㌔もの長距離を掘進した。付近には電力洞道などの重要構造物も通っており、2本の本線シールドで発生する200万m3もの土砂をここから搬出した。

複雑に絡み合う大橋JCT
 すでに供用が始まっている大橋ジャンクション。中央環状新宿線と3号渋谷線の間には、日々約4万台の交通量がある。ここを供用しながら、品川線と新宿線の本線、品川線から大橋JCTへの連結路を建設している。本線は開削工法で供用中のトンネルを切り開き、大橋連結路は非開削でシールドトンネルを切り開いて接続する。どちらも非常に高度な土木技術が必要だ。工事場所には山手通り、山手通り支線、国道246号、首都高速3号線、東急田園都市線などが輻輳している。

初めてづくしの大規模工事

東京都第二建設事務所品川線建設担当課長
後藤 広治 氏

 長さ8㌔の「中央環状品川線シールドトンネル工事―2」と、URUP工法による地上との接続部「大井地区トンネル工事」、「大井ジャンクション(JCT)」、そして大井北、南品川、五反田、中目黒の4つの換気所が、東京都の担当する品川線の工事だ。
 「日本で初めての技術が非常に多い工事」というように、これらの現場ではショーケースのように先端技術・工法が使われている。
 直径12mを超える超長距離シールドトンネルに加え、URUP工法は日本初の地上発進、地上到達シールド工法だ。また大井JCTでは、当時日本で最大の1250tクラスの大型クレーンを使い首都高速湾岸線の上に、長さ60m、重さ300tの桁を一括架設した。
 「初めての技術ということは、想定外の出来事がいつ起こるかわからないということでもある」。後藤課長は、これまでを振り返る。昨年4月には、本線シールド機が残置されていたPC鋼線を巻き込み、掘進がストップした。施工側に責任はなく、誰も想定できないトラブルだった。幸い2カ月程度で掘進を再開できたが、前の見えない地中では、何が起こるかわからない。
 「工事は24時間進められています。大みそかに電話で呼び出されることもあった」と、常に緊張を強いられた。

大井JCTでは超大型クレーンで桁を一括架設

 後藤課長は3年前に着任した時は、前任の課長が事業説明会19回、意見交換会40回を開催し全線で工事が着手していた。「自分が2009年夏に着任した時は、着手していた工事をいかに止めずに施工に弾みをつけるか、が自分の役目だった」と考えていた。
 発注者として、地元への説明や共同事業者である首都高速道路とのやり取りなど、さまざまな調整が発生する。安全面についても専任の安全担当者を置くようJVに要請し、西新宿の本庁を含めたパトロールも行って不安全行動の撲滅に努めている。
 また技術提案方式(詳細設計付)の発注では、従来発注者が持っているはずの設計データがなく、検査方法や毎年の支払いなど事務処理作業も大きく異なっている。限られた人員の中で、住民、区役所から信用のある「東京都の看板」を背負っているという責任感を持って職員とともに工事にあたっている。

発注者と施工者の役割分担

首都高速道路株式会社東京建設局品川線工事事務所長
青木 敬幸 氏

 「施工を行う受注者に仕事をしてもらっている。その環境を整備するのがわれわれ発注者の仕事」。青木所長は、品川線の施工にあたって、受発注者間の関係をこう話す。
 首都高速道路の発注部分は、鹿島JVが施工する長さ8㌔の「北行シールドトンネル」と「五反田出入口」、そしてハザマの施工する「大橋連結路」だ。そのうち青木所長を長とする品川線工事事務所は、発注者として「北行シールドトンネル」と「五反田出入口」の工事を監督している。
 8㌔を超えるシールドトンネルからは、実に100万m3もの掘削残土が発生する。多いときで1日にダンプトラック700台分もの土を現場から運び出し、横浜の南本牧にある埋立地や東京都の中央防波堤まで輸送する。
 「今回の契約では、発注者が土砂の受け入れ先を指定することになっており、シールドの掘進を止めないようにすることがわれわれの役割だ」という。
土砂の運搬ルート
 しかし、シールド工事は多くの理由で土砂の搬出期間が変化する。また、受け入れる埋立地も期間によって受入可能量が変わる。土砂が出せなければ掘進を止めなければならない。「当事務所は、専属の社員をつけて受入先と鹿島JVの間の段取りを調整している」「施工者は責任施工が当然だが、われわれが一緒になって協力することが必要」なのだという。工事を深く理解しているのが施工側の技術者なら、首都高速道路は多くの施工者と広く仕事をしてきたノウハウを持った技術者集団だ。
 北行のシールドは、過去に2度、シールドマシンセンターカッタービットのトラブルを経験している。しかし青木所長は「そのことが逆に、長距離掘進技術の確立につながっている」と見ている。実際に掘ってみないとわからないトンネルの世界では、弱点の克服こそが経験工学として残り、次の飛躍につながる。
 青木所長は、もともと保全畑の出身だ。品川線の所長に赴任してから6月で丸3年になる。新設の工事を担当していて心がけているのは、供用後の管理をしやすくすることと、完成後には見えなくなってしまう細かい部分のデータもきちんと残しておくことだ。
 首都高速道路は、供用後に活躍の本番を迎える。安全に長く利用される道路にするのが、品川線工事事務所の役割だ。

品川線の開通効果と首都高ネットワーク

 品川線の開通により、都心環状線の外側のリングとなる中央環状線は全線がつながることになる。東名高速から常磐道へのアクセスなど、都心を経由して都市間を移動する場合には現在、都内に目的がなくても都心部を走る「通過交通」が発生し、渋滞悪化の主要因となっている。中央環状線が整備されることで、各放射路線への接続がスムーズになり、首都高全体のネットワークがより効率良く機能することが期待される。具体的には拠点間移動の所要時間は、新宿~羽田空港、用賀~東京ディズニーリゾートで、それぞれ20分短縮できると試算されている。
 さらには、首都高ネットワークのリダンダンシーが確保され、大規模災害時等に強いネットワークが構築される。

・新設、保全の両面から安心追求

 生活、経済の両面から、首都圏の人やモノの流れを支える首都高は、最初の路線の開通から50年が経過。その後も着々とネットワーク整備が進み、総延長は300㌔を超えた。
 それでも、超過密化した都市部の道路環境は十分とは言えず、現在も14年度の完成を目指す晴海線晴海~豊洲間1・2㌔、16年度開通予定の横浜環状北線8・2㌔の建設が進行中だ。さらに、同線を延伸する形で東名高速に直結する横浜環状北西線7・1㌔についても、12年度の事業化を目指している。
 また、中央環状線の機能を最大限に発揮するため、発生要因の「ボトルネック」対策にも力を注ぐ。車線数を増やす改良工事を板橋~熊野町ジャンクション(JCT)間、堀切~小菅JCT間(内回り)で実施し、17年度までに完成させる予定だ。さらに小松川JCTの新設工事も19年度までに完成させる予定となっている。
 首都高会社ではこのほか、1号羽田線など初期に建設された路線の大規模更新も検討しており、首都圏の大動脈として重要な役割を担う道路ネットワークの機能を将来にわたり永続的に維持し、構造物の安全性を確保することを追求している。

首都圏3環状道路の将来展望

 首都・東京の道路網は江戸時代から日本全体へと広がる街道網の中心だ。日本の東西交通を結ぶターミナル機能を担う『首都圏3環状道路』の重要度は言うまでもない。
 また、首都高速中央環状線、東京外かく環状道路(外環)、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の3環状道路を中心とした首都圏の高速道路網は、都心に集中的に流入する通過交通を分散させるとともに渋滞緩和による都市環境の改善や交通の円滑化による都市活動の効率化など、首都圏のみならず日本経済の活性化にも広く波及していく。
 東京都は、国や関係機関等と連携して首都圏の社会経済活動を支えるこの道路ネットワークの整備促進に積極的に取り組んできた。
 2011年度末における首都圏3環状道路の整備率はいまだ48%だが、13年度には中央環状品川線の完成により全線開通する首都高速中央環状線を皮切りに、圏央道でも高尾山インターチェンジ(IC)~相模原IC間が開通、中央道と東名高速が結ばれる。
 14年度以降にも五霞IC~つくば中央IC間、藤沢IC~釜利谷ジャンクション(JCT)間など、3年後の15年度までに現在、事業中の路線の大部分が順次、供用を開始。圏央道では15年度までに整備率95%、3環状道路全体では整備率85%に到達する見通しだ。
 加えて、長年の懸案となっていた外環の大泉JCT~東名JCTについても、昨年12月に国土交通省が本格的な工事着手を表明。20年夏までの完成、そしてミッシングリンクの解消へ、大きく舵を切って動き出した。

・最大限の効果へ一体的料金体系

 ただ、こうした着実な整備が進む一方で、いま大きな課題となっているのが料金体系だ。現在、首都圏の高速道路は東日本、中日本と首都高速の各高速道路会社が管理運営している。各道路会社ごと、さらには路線ごとに異なる料金設定は地域間での格差とともに3環状道路が持つネットワーク機能を阻害する要因にもなりかねない。
 3環状道路全体の整備率が向上する15年度を見据え、その整備効果を最大限に引き出すため、まさに利用者視点に立った一体的な料金体系の実現が求められている。
 料金体系の一元化へ、都を始めとする首都圏の自治体、国などが連携し、共通認識のもとで首都圏3環状道路の最も効果的な活用方策を検討していくべき時期にきている。

地上発進・到達シールド 大井地区トンネル工事001


地上から直接発進する大林組のシールド機
  「シールドマシンは立坑から発進する」。この常識を打ち破ったのが、中央環状品川線大井地区トンネル工事で活躍したURUPシールド機だ。地表面に置かれた直径13mを超える巨大なシールド機が、徐々に地中へと潜っていく。アニメや人形劇のなかの話だと思っていたことが、品川線の建設工事で実現された。地上から地中の立坑へ、そこからさらに地上に戻るという離れ業をやってのけた現場について、田代良守元URUP大井JV工事事務所長に話してもらった。

→002に続く

地上発進・到達シールド 大井地区トンネル工事002

発進を待つシールド機

田代元所長
 地上の大井ジャンクション(JCT)と地下の品川北立坑を結ぶ大井地区トンネル。現在ここには、鯨のような巨大なセグメントが地中から2本、大きな躯体を地上に見せている。今まで例のない地上発進、地上到達を実現した円形シールドだ。
 ここで採用されたのは「URUP(ウルトラ・ラピッド・アンダーパス)工法」と呼ばれる。従来ならば地上と地下のアプローチ部は、開削工法か、立坑を設置してシールドトンネルを併用する工法が採られるが、URUPでは直接地上から外径13・6mの円形シールドを発進させ、立坑でUターンして再び地上に直接到達させる。
 この工法ならば、工期が3分の1、CO2排出量も2分の1にまで低減できる。また掘削・処理する土量も、開削がダンプ8万8000台、シールド併用で6万2000台となるのに対し、URUP工法では実に5万5000台にまで減らせる。

・実績ない、成功させねば

 現場を統括した田代良守元URUP大井JV工事事務所長は、「この工法は、実際の公共工事で採用されたことがない。それだけに、まず成功させないと」と考えた。
 URUP工法は2004年、東京都清瀬市にある大林組技術研究所敷地内で全長100mのトンネルを実際に試験施工した経験がある。この時は矩形シールドで一辺3・5mほどの大きさだったが、今回は円形で直径が13mを超える。
 「実績のないものを、大断面で採用してくれた東京都には感謝している」と田代元所長は振り返る。この初めての取り組みには、海外を含む5000人以上の見学者が現場を訪ねた。

・発進時の浮き上がり対策

 2010年3月1日、シールド機は掘進開始。シールド機は巨大な船のようなもので、水圧のある地下では強大な浮き上がり力が発生する。自分の直径より高さのある土被りがあれば、それほど気にする必要はないが、地上から発進するときは課題になる。発進時はあらかじめ地表面に盛土し、上から荷重をかけて対抗した。田代元所長は「次回、発進するときがあれば、高重量コンクリなどで浮力対策して、盛土なしで発進することもできる」と話す。
 もう一つの課題は、地中ならば上からも押さえつけられるセグメントが、上部荷重がないことで側圧を受け、縦に変形することだった。そのため、掘進時にはトンネル断面中央に、水平の仮設鋼材をつっかい棒として変形を抑制した。

→003に続く

地上発進・到達シールド 大井地区トンネル工事003


掘進を終えて地上に姿を現したシールド機
 ・電力洞道との離隔400mm

 シールド機が発進し、立坑でUターンして再び地上に到達するまでの間に、進路を横断するように電力洞道が直交している。洞道は外径が2400mm、URUPシールド2本との離隔はそれぞれ400mmしかない。直径13m超のシールドから見ると、まるで紙のように薄い離隔をクリアしなければならない。
 シールドを通過させる時には、洞道の手前から切羽の土圧を厳密に管理し、リアルタイムの計測データをもとに情報化施工を実践した。その結果、洞道は水平・垂直方向ともに10mm以下の地盤変異に抑えることができた。

・1500tが立坑内で回転

 2010年11月8日、立坑に到達したシールド機は、再び地上へ掘進するために坑内で回転させ、ジャッキアップして発進させる。狭い立坑内で回転させるために、通常シールド機後方に連なる油圧ユニットや運転席などはコンパクトにして一体化した。
 PC鋼線をシールド機受台に、円周状に巻き付けてジャッキけん引、180度方向転換した後は、センターホールジャッキを使い、わずか1日で発進側の架台まで上昇させた。11年1月末に再び発進したシールド機は、5月20日、地上へと顔を出した。
 「最低1D」。Dとは、トンネルの直径のことで、土被りが最低でもトンネルの直径分ないと掘削は難しい、というのが土木界の定説だった。初めて地上に頂部を見せてから、3日間かけて到達したURUPシールド機は、まさに土木の定説を打ち破った。

・土木業界全体の技術へ

 「もともとシールドトンネルは、下水道から地下鉄、道路へと発展してきた。トンネルは必ず地上との接点が必要になる。今回URUP工法が成功したことは、今後の土木界にとって大きな一歩となるはずだ」と田代元所長は振り返る。さらに「URUPのような工法は、今回たまたまわれわれJVが手がけただけだ。土木業界全体がこうした技術を身につけて拡がっていくことを期待」している。


シールドトンネルの概要図
 工事概要 ▽工事場所=品川区八潮
▽発注者=東京都
▽施工者=大林・西武・京急建設共同企業体
▽工事内容=シールド機:泥土圧式マシン外径13.6m、シールド延長886m(大橋方向550m、大井方向336m)、換気所:ケーソン工法39×35m、掘削深度44m、擁壁・カルバート部:開削工法、擁壁長さ274m、カルバート長さ80m、橋梁部:2径間PC橋梁60m、橋脚3基

→本線大井行編に続く

世界最大最長級シールド 本線大井行トンネル001

 大橋ジャンクションから進んできた交通が、湾岸線とリンクする地点となる大井。品川線の建設では、この大井行シールドトンネルは、大井から大橋へと掘進する。全長8㌔、外径12m以上の世界最大最長級シールドトンネルを、高度かつ精緻に組み立てた計画で掘りあげる。「中央環状品川線シールドトンネル工事-2」を施工する大成・大豊・錢高建設共同企業体を率いる大成建設の谷口敦作業所長に、シールドトンネル工事に不可欠なポイントを話してもらった。

→002に続く

世界最大最長級シールド 本線大井行トンネル002

掘進に使われたシールド機
 全長8㌔、マシン外径12・53m。いままでに、1基のシールド機で掘られたこれほどの大断面長距離トンネルがあっただろうか。品川区八潮の大井ジャンクション(JCT)付近の品川北立坑から発進したシールド機は、京浜運河をくぐり、目黒川下を東に掘進、大崎駅付近で山手通り下に進路を変え、はるか目黒区青葉台にある大橋JCTを目指す。この工事は、間違いなく世界最大級のシールドトンネルだ。
谷口所長
 この工事で達成した最大の月進量は、2010年10月に記録した637mだ。1日での最高は38mも進んだ。谷口敦所長は「本掘進が始まってから、ほぼコンスタントに1カ月あたり500m進み、震災や支障物による休止期間を除き8㌔を17カ月間で掘り終えた」と話す。
 これまで大成建設として手がけてきた直径12mを超えるシールドトンネルでは、神田川調整池で月進約300m、中央環状新宿線で200m程度だったことに比べると、品川線では2倍から3倍ものスピードが達成されたことになる。
 東京都が発注した大井行のこのトンネルは、入札が2度行われたために1年間スタートが遅れた。この遅れを取り戻すことも時間との闘いの理由となっている。

・すべてが重要な役割

 谷口所長は「8㌔の工事全体が一つの工場ラインのように、互いに関連性を持ち、すべての作業が重要な役割を担いながらつながっている」と話す。
 トンネル先端では、シールド機が土砂を掘り出す。この長距離を掘進すると掘り出す土砂量は100万m3に達する。この量は、霞が関ビル1棟分に匹敵する。
 マシンに後続して各種の台車が連なり、土砂は連続したベルトコンベヤーで運搬される。シールド機が掘進した後、トンネル本体となるセグメントを搬入しなくてはならない。
 トンネル本体の構築が終わっても、道路をつくるための床版や、隣接する北行トンネルとの間をつなぐ避難路と車両のUターン路の構築工程が追いかけてくる。これらの資材も掘進と同時に進めなければならない。
 「長いトンネルの中で、4つから5つの工事を同時に進めているため、資材の搬入、運搬では10分単位での工程を組んでいる」(谷口所長)というように、高度にライン化された工程管理が要求された。
 このクリティカルな工程を、8㌔もの距離で実現するには「すべての設備について、きめの細かいメンテナンスが要求される」という。例えばシールド機に30基装備されているジャッキの電磁弁が1つ壊れただけでも、ライン全体に影響が出る。掘削土を排出するベルトコンベヤーは往復で16㌔以上の距離になるが、ベルトを支えるローラーが壊れても結果は同じだ。
 「各設備には専門の要員を配置し、定期的な点検とメンテナンスを徹底的に行った」。不具合はすぐに発見し、先手管理で修理をする。「メンテの悪さやコストダウンの行き過ぎで工期が延びては本末転倒。早い時点で判断し“先行投資”してきた効果を工事が進むほどに実感した」という。

・同時施工に工夫

 シールドを掘進しセグメントを組み立て、トンネルの躯体が完成しても、道路トンネルとして使用するためには、床版やそれを受けるための側壁、避難時の横連絡坑、緊急車両が通るUターン路などが必要だ。この工事ではこれらも同時施工を行っている。
 この現場では、シールド延長と同じ長さでコンクリート打設量5万m3の床版工事に加え、首都高速道路が並行して施工する北行トンネルと地下40mで接続する11カ所の横連絡坑と3カ所のUターン路を同時に施工している。連絡坑では矩形鋼殻推進工法を採用、Uターン路では曲線パイプルーフを採用して切開き施工を行った。シールド掘進工事中にこれほど大規模な接続工事を進めることは過去の工事ではなかった概念だ。横連絡坑での牽引ジャッキを使用した刃口推進工法やUターン路の曲線パイプルーフとセグメントの接続方法などは、今回の工事で新たに考え出した工法だ。
 トンネル本体を掘りながらの複数の工種を同時施工するためには、新しい発想や工夫のほかに、工事関係者全員の協力が欠かせない。「これほどの難工事をほぼ計画どおりに進められたのは、ともに働く45人の職員と専門工事業者の技術面での成長とチームとしての一体感があった」からだ。

・新宿線から品川線計画立案へ

 谷口所長は、品川線に先行して8年以上におよび中央環状新宿線の現場を経験している。その後、総合評価制度による設計施工入札の品川線計画立案に携わった。2度に渡る入札となったが、ベルコンなどシールド設備仕様や床版工法などをすべて変えて落札した。インバートの高さもバッテリー運搬車が複線で使えるような工夫をしている。
 「アクアラインや新宿線の大断面シールドの経験を踏まえ、様々な要素技術をブラッシュアップして今回の計画を行った。品川線シールドは大断面長距離シールドの集大成だと思っている」

→003に続く

世界最大最長級シールド 本線大井行トンネル003

2011年12月に掘進完了
・品質確保と高速施工を両立

 標準的なシールド工法でこのトンネルを施工すると、掘進作業と組立作業はそれぞれ独立した形で行うため、月進500mの達成は難しい。
 ここで採用した「セグメント掘進同時組立システム」では、シールドジャッキのブロック分割式の油圧制御と自動のマシン方向制御システムにより、掘進中に組立部分の掘進ジャッキを抜きながらセグメントを組み立てることで、幅2mのセグメント掘進~組立を60分台で完結することを実現。高速掘進で大きな役割を果たした。また、外径12.3mのセグメントの組立精度は、規格値250分の1に対して500分の1以下、真円誤差もプラスマイナス20mm以内という高い品質精度を確保した。

・掘削土砂の海上輸送

京浜運河を使って土砂を搬出
 100万m3という膨大な掘削土砂を運び出すために、現場西方向にある京浜運河から海路を利用して輸送を行った。シールドマシンの搬入時にも海路を利用してシールド機組立期間を数カ月短縮した。土砂搬出では都道上に設置した横断ベルコンを介して、シールド掘削土砂を容量500m3の曳船土運船に載せ、中央防波堤の中継基地まで輸送した。その後、中央防波堤に仮置きした土砂は容量1,500m3を大型土運船に積み、横浜港南本牧の港湾埋立地に海上経由で運搬した。これらの海上利用は、大型工事が輻輳する中で、極力工事車両を減らし、周辺交通への負担軽減と工事中のCO2排出削減に大きく寄与した。

工事概要
▽工事場所=品川区八潮1丁目~目黒区青葉台4丁目
▽発注者=東京都
▽施工者=大成・大豊・錢高建設共同企業体
▽工事内容=シールド機:泥土圧式マシン外径12.53m、掘進延長約8.0㌔、一次覆工7,967m、道路床版6万0,040㎡、横連絡工11カ所、Uターン路3カ所、発生土処分97万5,000m3

→本線北行トンネル編に続く

もう一つの超長距離シールド 本線トンネル北行001

ロコで直径12メートルを超えるセグメントを搬送中
 大井から大橋を結ぶ2本の超長距離シールドトンネルのうち、北行と呼ばれる本線トンネルは首都高速道路が発注し、鹿島・熊谷・五洋特定建設工事共同企業体が施工している。3月22日、約3年に及ぶ掘進期間を経て、最後のセグメントを組み上げた。東京都発注の大井行本線トンネルと同じ立坑から発進し、約3・0mの離隔で2本の巨大トンネルが併走する。五反田の出入口構築という難易度の高い工事も抱えながら、シールド掘進は完了した。この中央環状品川線シールドトンネル(北行)工事を統括する森口敏美中央環状品川線統合事務所所長のインタビューを通し、工事を振り返る。

→002へ続く

もう一つの超長距離シールド 本線トンネル北行002

セグメントを組み立てる
 2012年3月22日、マシン外径12・55mの泥土圧式シールド機が、品川区大井から約8㌔の道のりを掘進し、目黒区大橋にある大坂橋連壁の表面へ静かに到達した。
 最後となる4674リング目のセグメントを組んだ後、シールド機内部のジャッキを押し出す。すると2000tの機体はゆっくりと連壁に向けて進み始める。約600mm進んだところで、シールド機中央のセンタービットが、人からは見えない鋼製隔壁の外で新宿線建設時につくられた連続壁表面に触れる。
 同時にシールド機のコントロールルームでは、カッターを回転させるモーターのトルク値をグラフで確認しながら、慎重に掘進を進める。トルクグラフの数値が一瞬跳ね上がり、マシン先端部のビットが壁に触れたことが確認される。「掘進完了!」の声で、09年2月初旬から始まった掘進作業がようやく終わった。
 「切羽を持っているときは、数々の悩み、トラブル、リスクを負っている。地山という自然を相手に、何が起こるかわからないという不安を抱えながら、仕事を進めてきた」と森口敏美統合事務所長は胸の内を明かす。
 掘進時は、1mごとに約240t発生する大量の土砂の扱い、1枚約10tにもなる巨大なセグメントの搬入など、品質・安全面での苦労は絶えない。掘進が終われば、こうしたリスクからはとりあえず開放される。
 しかし、最終の完成物は道路空間を形作ることだ。これまでは掘進と床版づくりが主役だったが、これからは、内装や横連絡坑、五反田出入口など、道路としての機能づくりが始まる。
 「場所と工種と工程、時間軸という高度なパズルが4次元で展開される」と森口所長がいうように、これから2年間は協力会社の数も増え、新たな工事も生まれる。信頼しあえるチームで仕事を続けるには、協力会社の立場になって彼らの仕事に空きが生まれないように工程を組む必要もあるという。

・7人の「隊長」たち

掘進に使われたシールド機
 森口所長は自らを「大規模工事調整系」と呼ぶ。「私は統合所長という責務を負っているが、本線シールド工事の主役は7人の隊長たちだ」。現在作業所は、本線シールドの作業所と五反田出入口の作業所の2カ所に分かれている。本線には45人、五反田に37人の職員がおり、掘進、残土、床版、機電、横連絡坑・Uターン路、内装、設計の「7人の隊長」と五反田を統率する所長がいる。
 「彼ら隊長は、いわゆる課長だが、それぞれが所長の意識をもって活躍し、自分は彼らに声をかける立場」だ。8㌔のシールドと出入口の構築というのは大変大きな現場だ。中規模のダム現場ですら40人程度の職員で切り盛りするのが普通だが、この現場では80人を超える職員が立ち働く。
 この巨大作業所で大切なのは「情報をきちんと伝達すること」にあり、隊長である課長はJVの社員と、社員は協力会社の職長と、「同じ方向を見据えられるように情報伝達し、意識共有する」ことが重要だ。
 加えて「高度にライン化されたシールド工事では、遠い先まで見据えて考え、改善点が必要ならば一人で悩まずに早く決断して対応することが必要」だという。必要なら投資を惜しまず投入する。
 森口所長は、最終的な調整や折衝を受け持つという意味で、「大規模工事調整系」という言葉を使う。

→003へ続く

もう一つの超長距離シールド 本線トンネル北行003

シールド機のカッター
・大断面Tは土工事と同じ

 森口所長のトンネル経験は3本目だ。会社には「シールド屋」といわれる所長も多いなか、森口所長は比較的かかわった本数が少ない。
 初めてのトンネルは、米国の79番道路上水トンネルというTBM(トンネル・ボーリング・マシン)だった。上水道トンネルで、約6㌔の長距離トンネルだ。その後、埼玉県の中規模ダム現場を経て、中央環状新宿線の神山町・代々木シールド(外回り)を手がけた。
 「本線トンネルの掘削土量100万m3というのは、ちょうど中規模のアースダム1基分に相当する」そうだ。「大断面トンネルは、土工事と同じこと」というように、土の動かし方が工事の進捗や現場の士気に大きく影響する。
 本線シールドでは、土の搬出はダンプトラックで行う。最盛期で1日あたり160台から180台のダンプを集め、延べ700台の残土を搬出した。
 「早朝から搬出を担当するダンプの立場からすれば、朝7時の積み込みと8時半の積み込みかで大きな不公平が起こる」。その運行管理、安全指導、協力会社間の調整までもが、職員の仕事だった。

・日本最高の掘進記録

 11年12月末、日本で最高の掘進記録が生まれた。
 「月進708m」。この数字は掘削径10m以上のトンネルで、1カ月(連続暦日30日)でどれだけ掘れたかを表す。北行本線トンネルでは、昨年12月27日に1日18リング36mを最高に、22日間で、この月進記録を達成した。
 これは世界記録で見ても、スペインのマドリッドで記録されたM30トンネルに次ぐ2番目の記録となった。

・五反田の出入口

複雑な工法を駆使している五反田出入口
 品川線で唯一の出入口となる「五反田出入口」は、首都高速発注で北行本線トンネルを施工する鹿島JVが担当する。大井方面から見て大橋方向に進入する五反田入口は、北行本線トンネルに接続され、次に五反田出口が大井行本線トンネルへと接続する。
 出入口は、開削工法と3つのパイプルーフアーチ工法で構築される。開削工法では、地上から地下に構築済みの2本のシールドトンネルに向けて掘削、土留壁を支保しながら鉄筋コンクリートの躯体を構築してシールドトンネルのセグメントを切り開く。
 パイプルーフアーチ工法は、立坑から直線のパイプを軸方向に挿入し、10数本のパイプをアーチ状に並べて屋根を形成して付近の土を凍らせ、小型の掘削機械で内部を掘り進める。2本の本線シールドトンネルとアーチ状のパイプルーフで守られた空間で出入口の躯体を構築し、最後に空間を埋め戻す。
 出入口本体の躯体とシールドトンネルのセグメントを鉄筋とコンクリートで一体化するため、主筋や配力筋の配置には細心の計算や合理化が必要だった。

・工事概要

▽工事場所=品川区八潮1丁目~目黒区青葉台4丁目
▽発注者=首都高速道路株式会社
▽施工者=鹿島・熊谷・五洋中央環状品川線シールドトンネル(北行)工事特定建設工事共同企業体
▽工事内容=シールドトンネル工事:掘進延長約8.0㌔、泥土圧式シールド工法、マシン外径12.55m、セグメント外径12.3m、厚さ400mm、横連絡坑、Uターン路、五反田出入口:コンクリート工5万3,000m3、掘削工14万m3、土留壁工2万2,000㎡、パイプルーフ工3カ所、舗装工(仮復旧)9,500㎡

→大橋連結路編に続く

非開削でシールドをつなぐ 大橋連結路-001

シールド機の心臓部だけ再利用する
 中央環状線の新宿線と品川線は、大橋ジャンクション(JCT)を経由して3号渋谷線と分岐・合流する。品川線と大橋JCTを結びつける役割を担っているのが大橋連結路工事、新宿線と大橋連結路を接続するのがEF連結路トンネル工事だ。この2つの工事はハザマが単独で受注し、南に伸びる環状線アクセスを地下で接続するという高度な施工を行っている。大井立坑より掘進してきた2本の本線シールドと連結路シールドを山岳工法を取り入れて一体化するほか、新宿線を供用させながらシールドセグメントを切開く工事も行う。それらの工事を手がけるハザマの佐々木順一統括所長へのインタビューを含め、工事を紹介する。
→002へ続く

非開削でシールドをつなぐ 大橋連結路-002

地中拡幅向けにつくられたトンネルの壁面
 大橋連結路工事、EF連結路トンネル工事の現場は、供用中の大橋JCTから大井方面に分岐していく開削部の約110mの区間だけが、地上とのアクセスすべてを担う。
 シールド外径9・7mという巨大なシールドマシンで約500mの距離を上下2層で掘進し、本線と約200m区間を接続する。加えて、新宿方面から大橋JCTに向かう既存のシールドトンネルとも開削工法で接続する。
佐々木所長
 佐々木所長は「限られた敷地で、輻輳する工事をすべてマネジメントすることが、この工事の大きな克服課題だ」と話す。
 大橋連結路工事では、シールド発進基地となる立坑の土留め壁施工のためCSM工法を採用し、地上避難出口となる深さ約50mの大深度立坑をわずか120㎡の三角地帯に構築するために、泥水掘削によるアーバンリング工法(セグメント圧入ケーソン工法)を採用した。
 また、EF連結路トンネル工事では周辺の再開発ヤードと近接しているため、土留め壁を本体利用でき、建設用地幅を縮小することができるソイルセメント鋼製地中連続壁工法が採用されている。すべて限られた敷地での施工を可能にするための工夫がなされている。
 今後は切開き工事や構築工事にあたり、地上のシールド発進基地となった立坑部の防音ハウス、大橋JCT側のゲートの2カ所で輻輳する地下の工事をマネジメントしていかなければならない。

・CSM工法で“狭さ”克服

 上下2層の連結路を構築する大断面シールドの発進基地は、幅22mの山手通り支線につくられた。交通量の多い道路上から36mもの深さを持つ大深度ソイルセメント地下連続壁を構築するために、CSM工法を採用した。
 「路上での作業帯の幅はたった6mだった」(佐々木所長)というように、「狭さ」という課題を克服するために、掘削機はリーダー式の従来工法に比べ、低空頭型(H=8・5m)で圧迫感がなく周辺環境に優しい吊り下げ式とし、この作業帯で施工可能なクアトロサイドカッターを製作した。

・シールド駆動部を再利用

 一昔前に比べ、シールド機の掘進延長も、現在では10㌔近い長さを1基で掘進できるようになってきた。連結路のトンネルは長さが約500mだが上下線で2本が必要だ。高価なシールド機は、工事に合わせて製作するので転用が難しい。延長の短いシールドトンネルのコスト縮減のため、シールド機を転用するDSR工法を採用した。
 このマシンは、シールドの面盤を回転させる駆動部の内胴と外胴の二重構造となっている。下層のトンネルを掘り終えたあと、重要な駆動部を引っ張り出して発進基地まで戻し、上層トンネルにもう一度利用する。「大断面でのDSR工法の実績は、世界でも例がない」(佐々木所長)という。
 引き抜いた駆動部は、2日かけてジャッキを使いながら切羽から戻し、立坑で上層トンネル掘進を待つ2台目のシールド機外胴部に組み込まれた。
 この工区の地盤は上総層というしっかりした泥岩で、駆動部を引き抜いたあとの鏡(トンネル切羽の最先端部分)は自立し、地山がそのまま観察できるほどだった。
→003へ続く

非開削でシールドをつなぐ 大橋連結路-003

右側は、車両が通行する新宿線のシールドトンネル外面
・営業線との地中接続

 SJ14工区(1)EF連結路トンネル工事は、すでに交通が行き交う供用済路線のシールドトンネルを切開くという前代未聞の工事だ。中央環状新宿線から大橋JCTに入ってくるシールドのセグメントを、開削工法で構築する躯体と地中で接続する。
 すでに新宿線は供用されており、開通時に設置されているプロテクター壁1枚を隔てて一般車が通行している。現在は躯体を施工中で、今後躯体が完成した時点で供用されている新宿線のセグメントの一部を外し、最終的にプロテクターを撤去すると、品川線から大橋JCTに向かう大橋連結路下層の交通と合流することになる。

・安全はすべてに優先

 佐々木所長は、中央環状品川線大橋連結路工事、SJ14工区(1)EF連結路トンネル工事、大橋連結路トンネル内装その他工事など錯綜する現場を監理している。
 佐々木所長の方針は「安全はすべてに優先する」だ。工事の計画から実際の作業手順の作成、現場全体への周知、そして作業時の確認という基本の安全施工サイクルにこだわる。
 「ここは、本当に狭い範囲にまったく異なった複数の現場が1つの軸を中心に動いている。安全に工期内完成という大きな目標に向かい、皆の力を結集していきたい」
 ハザマの精神は『微結』。戦後の復興期から、一人ひとりは微力であっても、結集すれば大きなエネルギーを発揮できる、という微粒結集を社是に活動してきた。この現場にあっても、その当時の社是は生きている。

・都市土木と山岳工法のハイブリッド

工事の概要図
 大橋連結路の工事を一言でいうならば、「都市土木と山岳工法のハイブリッド」だろう。シールドトンネルという都市土木の構造物同士を、構築後に山岳工法を取り入れて連結する。大井地区から掘進してきた8㌔もの長さのシールドトンネルを、大橋地区から掘り進んだ500mのシールドトンネルからつなぐ。これまでに例のない工事となる。
 通常、シールドトンネルは、水密性が重要視されセグメントを内部から外すという概念はなかった。ところが大橋連結路工事では、200mにわたって隣接するトンネル間にある土をNATMで掘削、アーチ型セグメントで連結した後、中間部のセグメントを慎重に外し分合流部を構築する。
 この工法が実現したのは、硬い粘土層である泥岩を基盤とした上総層群というしっかりした地質であったことが大きな要因である。
 分合流部は、タイプAからDまでの4種類の断面で設計され、内空断面の余裕により拡幅の必要がないタイプA区間、本線のセグメントの一部を入れ替えて拡幅するタイプB区間、そして本線、連結路2本のトンネルを切開いて一体化する大断面無柱のタイプC区間、本線、連結路2本のトンネルを切開いて一本柱を新たにつくるタイプD区間で構成されている。
 施工は、到達したシールド機のスキンプレート(外胴部)を内側から2mほどの幅で切り取り、まず人力で機械が入るほどの空間を確保する。その後、上半部に小型の掘削機械を入れて、隣接する本線シールドセグメントの外側まで掘削していく。
 切羽側からシールドの発進基地方向に掘り進み、山岳工法でおなじみのアーチ支保工と吹付けコンクリートでトンネルを形成する。もちろん施工メンバーは、シールド技術者と山岳技術者が参加する。
 タイプC区間では、もともとシールドセグメントに仕込んでおいた接続部に、上半5分割、下半4分割のアーチ型セグメントを組み立てる。その後、中間部の土を掘削して、慎重にシールド内側から本線と連結路のセグメントを撤去していく。
 この工事の課題は本線、連結路シールドトンネルの許容誤差だ。1本のシールドトンネルのセグメントリングを組立てるのは既存の技術で施工できるが、別々に掘進したトンネル同士を結ぶアーチ型セグメントとなると話は別だ。トンネル軸方向でいえばトンネル同士のセグメントリング主桁位置のずれを5cm以内に収める必要がある。また、断面方向でいえばトンネル基線からのずれが5cm程度あるため、測量により出来形を確認してセグメントを製作しなければならない。シールドトンネルとの接続部のアーチ型セグメントは「オーダーメード」だ。現地での測量を元に、セグメント製作図面を書き下ろし、発注して1.5カ月で完成する。これまでの都市土木とは違う地中拡幅工事は、これから本番を迎える。

工事概要
 〈中央環状品川線大橋連結路工事〉
▽発注者=首都高速道路株式会社
▽工事内容=開削部(山手通り支線部)長さ55m、掘削幅13-22m、掘削深度33m、非開削部(シールド部・接続部)上層トンネル500m(うち接続部210m)、下層トンネル480m(同180m)、シールド機外径9.7m、地上避難出口1カ所、掘削深度約50m、掘削外径5.1m
▽工期=2007年5月22日-13年6月30日

〈SJ14工区(1)EF連結路トンネル工事〉
▽工事内容=開削部(大橋JCTヤード部)長さ65m、掘削幅12-22m、掘削深度30m、ソイルセメント鋼製地中連続壁約2,000㎡、躯体工約7,500m3、切開き工40m
▽工期=09年9月25日-13年12月2日
→トップへ戻る